はじめに

●電子辞書専用機の普及

でんし‐じしょ【電子辞書】CD-ROM に収めたりネットワークで流したりして、コンピューターで利用する形態の辞書。
〜『広辞苑第五版』より

かつては「電子辞書」と言えばCD-ROM辞書のことを指しましたが、現在(2004年)では、IC電子辞書の専用機にすっかりお株を奪われた感があります。『広辞苑』も第六版で用語を改訂する必要がありそうです。(*1)

ここ数年、辞書専用機のコンテンツの充実度・低価格化・操作性の向上には目を見張るものがあります。 電車の中や喫茶店で辞書専用機を開いて語学の勉強をしている人を見ることも、珍しくありません。

辞書専用機には、ざっと数えただけで、次のようなメリットがあります。

一般の方に電子辞書の購入の相談を受けたとすれば、よほどのことがない限り、辞書専用機を勧めると思います。

●PDAで辞書を使う

PCに比べてハンディで起動が速いといえば、WindowsCEやPalmのようなPDAがあります。 PDAにPC用のCD-ROM辞書を導入して使用するという使い方も可能です。 特にEPWING/電子ブックは、辞書データの形式がJIS X4081規格として公開されているため、 ほとんどのPDA上で検索ソフトが開発されています。(規格公開前から有志によって解析されていましたが)

辞書専用機に比べて、PDAで辞書を使う理由はなんでしょうか。

もちろんデメリットもあります。

既にPC用のCD-ROM辞書を保有しており、活用の知識がある人はPDA。 それに当てはまらない人は辞書専用機というのがお勧めでしょうか。

《参考》→ 付表:電子辞書との対応表

●EBPocketの開発について

2004/6/11に、HP iPAQ h1937(PocketPC2003)を購入しました。目的は通勤中の文書閲覧と辞書引きでした。EPWINGビューアには、高名な Buckingham EB Player を使用する予定でした。 ところが、Buckingham EB Playerの配布サイトが2004/6/6にクローズしていたことが判明!(*2)

とりあえず急場しのぎに「システムソフト電子辞典Pocket」を使用しておりました。 その後 Jun Ohtaさんが EPWING→「システムソフト電子辞典」変換ツールの enssed を開発してくださり、任意のEPWING辞書を変換してPocketPC上で使えるようになりました。

ところが「システムソフト電子辞典Pocket」を使う内に、その機能の低さと動作の遅さに耐えられなくなり、WindowsCEの勉強を兼ねて、PocketPC版のビューアを自作することにしました。これがEBPocketの開発の動機です。

WindowsCE用ソフトウェアの開発はeMbedded Visual Toolsで行います。 ところがこのエミュレータの開発効率が非常に悪いため、「Windows版を作ってソースを共通にし、主にWindows版で開発を行う」というアプローチを取りました。 この結果、副産物としてWindows用のEPWINGビューアである EBWin ができました。

EBPocketの公開により、日本の辞書標準規格であるEPWING/電子ブックが広く使われることになれば、作者としてこの上ない喜びです。

それではみなさま、よい辞書ライフを!


*1 2008年に発刊された広辞苑第六版では、「電子辞書」の項は次のように変わりました。

でんし‐じしょ【電子辞書】 CD-ROMに収めたりネットワークで流したりして、コンピューターで利用する形態の辞書。また、辞書などのデータを内蔵した、小型の専用コンピューター装置。

広辞苑第六版のEPWING版はついにDVD-ROMになりました。 2008年になってもEPWINGの新タイトルが出るというのは喜ばしい限りです。第七版のEPWINGが出るかどうかは、心許ないですが…(2008/5/30)

*2 その後、web.archive.orgにBuckingham EB Playerの実行ファイルがアーカイブされていることが判明しました。

http://web.archive.org/web/*/www18.tok2.com/home/BuckinghamSoftware/index.shtml