市販の電子辞書・電子百科事典には、大別して独自規格 の製品と共通規格 の製品があります。
独自規格には、たとえば小学館スーパーニッポニカ、平凡社世界大百科事典などがあります。これらは製品に付属する検索ソフトウェアでしか操作できないため、製品が発売されているOS以外では利用できません。 また製品毎に操作性が異るため、いくつもの辞書製品を使用するユーザには不便です。 その代わり、書籍と同じフォントを使用したり、ビジュアルな検索機能など、辞書を最大限に活用するために工夫を盛り込みやすい利点があります。
(日本の)電子辞書の共通規格にはEPWING (EPWINGコンソーシアム)と電子ブック (SONY株式会社)があります。共通規格の利点は、検索ソフトウェアや使用するプラットフォームが自由に選択できる 点にあります。 EPWINGと電子ブックは、Windows、Mac OS X、LinuxといったOSから、iPhone、Androidなどのスマートフォンに到るまで、多くの環境で使用することが可能です。
1986年に岩波書店と大日本印刷、富士通の共同開発によるCD-ROM辞典「広辞苑第三版CD-ROM版」が発売されました。 この辞書用に開発されたWING規格はその後EPWINGと名称を変更し、1991年にEPWINGコンソーシアムが 設立され、電子辞書規格の普及活動を行いました。1997年にEPWING V1規格の一部が「日本語電子出版検索データ構造(JIS X4081:1996)」 としてJIS規格化されました。その後、画像や動画の拡張機能を含めたJIS X4081:2002が制定されました。
EPWING規格をもとに携帯型辞書端末用に製品化された派生規格として、ソニーの「電子ブック」があり、1990年に 「Data Discman DD-1」が発売されました。電子ブックはその後三洋電機、松下電器からもプレーヤーが 発売され、150以上のタイトルが出版されていましたが、電子ブックコミッティの活動終了により、現在は販売が終了しています。
EPWINGと電子ブックの規格には、次のように複数の版が存在します。
EPWING V1.0 | EPWINGの基本検索機能をサポート。文字表示・白黒の 図版表示・音声再生ができる。 |
EPWING V2.0 | EPWING V1の基本検索機能に加え、カラー図版表示や 圧縮音声(WAVE)の再生などをサポート。 |
EPWING V2.0 ST | 美術など、幅広いジャンルの書籍のために、カラー画像の 表示と音声の連続再生をサポート。 |
EPWING V3.0 | EPWING V2の拡張機能に加え、MPEG-1の動画再生をサポート。 |
EPWING V4.0 | EPWING V3の拡張機能に加え、圧縮やハードディスク インストール機能をサポート。 |
EPWING V5.0 | EPWING V4の拡張機能に加え、JPEGなどのマルチメディア 機能拡張や数式表示などの表現系機能をサポート。 |
EB | 1994年までに出版された電子ブックの中で、文字のみ、もしくは文字・画像対応しているもの(日本国内のみ) |
EBG | 1994年までに出版された電子ブックの中で、文字のみ、もしくは文字・画像対応しているもの(日本を除く全世界) |
EBXA | '95以降の統一規格。 |
EBXA-C | 中国文字表示に対応したEBXA。 |
S-EBXA | '98に拡張された仕様。圧縮形式、JPEG画像等。 |