1 EPWINGと電子ブック

市販の電子辞書・電子百科事典には、大別して独自規格 の製品と共通規格 の製品があります。

独自規格には、たとえば小学館スーパーニッポニカ、平凡社世界大百科事典などがあります。これらは製品に付属する検索ソフトウェアでしか操作できないため、製品が発売されているOS以外では利用できません。 また製品毎に操作性が異るため、いくつもの辞書製品を使用するユーザには不便です。 その代わり、書籍と同じフォントを使用したり、ビジュアルな検索機能など、辞書を最大限に活用するために工夫を盛り込みやすい利点があります。

電子辞書の共通規格にはEPWING (EPWINGコンソーシアム)と電子ブック (SONY株式会社)があります。共通規格の利点は、検索ソフトウェアや使用するプラットフォームが自由に選択できる 点にあります。EPWINGと電子ブックは、Windows、Mac、UNIX、BTRONといったOSから、Palm、PsionなどのPDAに到るまで、多くの環境で使用することが可能です。

EPWINGは12cmCD-ROMの規格です。電子ブックはシングルCDと同じ大きさの8cmCD-ROMを専用ジャケットに格納して専用プレーヤで検索します。電子ブックをパソコンで検索するときは、ジャケットからCD-ROMを取り出して使用します(ジャケットの爪を押せば簡単に取り出せます)。EPWINGの方が容量が大きいため、同じタイトルがEPWINGと電子ブックで発売されている場合は、EPWING版の方が高機能です(漢字表記での検索ができたり、マルチメディアデータが充実している)。

CD-ROMの規格
共通規格 EPWING(EPWINGコンソーシアム)
電子ブック(SONY)
独自規格 DTONIC(イースト)
SystemSoft電子辞典シリーズ
ロボワード
スーパーニッポニカ(小学館)
世界大百科事典(平凡社)
エンカルタ(Microsoft)
など

EPWINGと電子ブックの規格には、次のように複数の版が存在します。このうちEPWING V1については規格の一部がJIS X4081として公開されています。

EPWINGの種類
EPWING V1.0 EPWINGの基本検索機能をサポート。文字表示・白黒の 図版表示・音声再生ができる。
EPWING V2.0 EPWING V1の基本検索機能に加え、カラー図版表示や 圧縮音声(WAVE)の再生などをサポート。
EPWING V2.0 ST 美術など、幅広いジャンルの書籍のために、カラー画像の 表示と音声の連続再生をサポート。
EPWING V3.0 EPWING V2の拡張機能に加え、MPEG-1の動画再生をサポート。
EPWING V4.0 EPWING V3の拡張機能に加え、圧縮やハードディスク インストール機能をサポート。
EPWING V5.0 EPWING V4の拡張機能に加え、JPEGなどのマルチメディア 機能拡張や数式表示などの表現系機能をサポート。

電子ブックの種類
EB 1994年までに出版された電子ブックの中で、文字のみ、もしくは文字・画像対応しているもの(日本国内のみ)
EBG 1994年までに出版された電子ブックの中で、文字のみ、もしくは文字・画像対応しているもの(日本を除く全世界)
EBXA '95以降の統一規格。
EBXA-C 中国文字表示に対応したEBXA。
S-EBXA '98に拡張された仕様。圧縮形式、JPEG画像等。